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喜びを共有するということ

PEERSつれづれ

 『おかえりモネ』を観ている。

 「朝ドラ」を観ていて、ときどき、気づかされることがある。

 主人公の百音(”モネ”)ちゃん(清原果耶さん)の幼馴染、亮くんの父親、新次さん(浅野忠信さん)は、震災で奥さんを亡くしてからアルコールの問題を抱えている。それでも、モネのお母さんのサポートもあって、治療を受けるようになっていた。少しずつ、少しずつ前進していたかな、と思っていた時に、新次さんがまたお酒を飲んでしまった。

 モネの両親に連れられて、モネの家にやってきた新次さん。モネのおじいちゃんが優しく問いかける。

「何か、嫌なことでもあったのか。」

 その逆だった。新次さんの息子の亮君は漁師をしているのだが、たくさん魚を釣り上げたという嬉しい知らせがあったのだという。とても嬉しかった新次さん。でも、その嬉しさを伝える相手がいなかった。

「一緒に喜ぶ相手がいないんだ。」

 愛する人を失った新次さんの悲しみと寂しさが表現されている。

 わたしたちが健康で生きていくことの一つに、自分を助けてくれたり、支えてくれたりする人の存在が挙げられる。特に、私たちが困ったとき、辛いときに話を聞いてくれたりする存在として取り上げられることが多い。

 でも、この新次さんのエピソードを見て、悲しいときに話を聴いてくれる人がいるだけでなく、嬉しいこと、喜びも伝えられる相手がいること、この気持ちを共有できる人がいるということも、同じように大切なのだと気づかされた。

 コロナ以前は、他愛もない、くだらない雑談のなかで、私たちは面白かったことや楽しかったことを誰かと分かち合っていたのだろう。人と人との間に物理的な距離が生まれたとしても、喜びも悲しみも共有できる誰かとつながり合うことを大切にできたらな、と改めて思った出来事だった。

おすすめの本 第3回:前川浩子

おすすめの本や映像作品

『若草物語』(L. M. オルコット 作/吉田勝江 訳 角川文庫)

小学生の頃、女の子が主人公の物語が大好きでした。たくさん読んだのは外国のお話。女の子が冒険をしたり、困難を乗り越えたり、恋をしたりして成長する姿をわくわくしながら楽しみました。

その中で1冊を取り上げるとしたら『若草物語』です。アメリカの小説家オルコットの作品で、マーチ家のメグ、ジョー、ベス、エイミーの四姉妹を描いたお話です。アメリカの南北戦争が物語の背景にあるので、この時代のアメリカがどのような社会だったのか、日本とどんなところが違うのか、といったことを考えるきっかけにもなるかもしれません。ですが、やはり、物語の面白さはこの四姉妹にあります。きょうだいであっても、一人ひとり性格が違うこと、お姉さん、妹といったきょうだいの関係性によって作られる役割、きょうだいげんかがあることなど、きょうだいならではの難しさがあります。しかし、一方で、きょうだい同士が思い合う姿、助け合うあたたかさも、そこにはあるのです。

ここでは四姉妹の性格については内緒にしておきます。ぜひ、みなさん自身で、この姉妹たちの性格を味わってみてください。そして、自分は誰の性格に似ているかな、とか、誰と仲良くなりたいかな、といったことも考えてみると面白いかもしれません。

今思うと、私がかつて、女の子が主人公の作品をたくさん読んだのは、その主人公に憧れたり、好きになったりして、自分もそんな女の子になりたいという気持ちを持つためだったのかもしれません。物語の中で出会ってきた、たくさんの女の子たちが、もしかしたら今の私を作ってくれているのかもしれませんね。

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