おすすめの本や映像作品
室橋弘人
『チョコレート戦争』(大石真 作/北田卓史 絵 理論社)
自分から紹介したいのは、大石真さんの『チョコレート戦争』です。
チョコレートのお城が飾られた洋菓子店のショーウィンドウが突然割れてしまうという場面に居合わせてしまった二人の少年は、店主や社長に有無を言わさず犯人と決めつけられてしまいます。
大人たちの横暴で一方的な態度に悔しさを噛みしめる彼らは、抗議のためにチョコレートのお城を盗み出す計画を立てるのですが……というところからお話は二転三転。とにかくテンポよく転がるストーリーと、思わぬ方向から事態の解決に向かう意外性、通されるべき筋が通される爽快感など、物語を読む楽しさがたくさん詰まっている一作で、自分が「本を読むことは面白いんだ!」と感じるようになった原点の一つです。
自分が小さかった頃のことを振り返ってみると、「子どもが大人をやり込める話」というのは、それだけで魅力的ですごくワクワクしたように思います。それはきっと、家族から同年代の友人へと社会関係を広げて成長していく真っ只中にいた少年の背中を、気持ちよく押し出してくれたからではないでしょうか。
ある程度の漢字も読めるようになったくらいのお子様を読書の道に誘う一作としてお勧めします。
おすすめの本や映像作品
則定百合子
『赤毛のアン』(L. M. モンゴメリ 作/村岡花子 訳 新潮文庫)
私からは、女の子が主人公の物語でもう一冊、言わずと知れた名著「赤毛のアン」を紹介したいと思います。
この物語は、孤児院で育った主人公のアンが、マリラとその兄マシューに引き取られるところから始まります。マリラとマシューの深い愛情のもと、自然豊かな土地でのびのびと生きる子ども時代のきらめきが詰まったアンの姿は、私たちの想像をかきたて、世界は彩に溢れている、ということを教えてくれます。
そして、生まれて初めて、本を読んで涙がこぼれるという経験をしたことを、私は今でも忘れられません。どうして涙がこぼれたのか…は、この本を読んでみてくださいね。いつか物語の舞台となったプリンスエドワード島に行ってみたい。
大人になった今でも、そんな夢を描かせてくれる素敵な一冊です。
引用
赤毛のアン 赤毛のアン・シリーズ ルーシー・モード・モンゴメリ (著)村岡花子(訳),新潮社; 新装版
おすすめの本や映像作品
前川浩子
『若草物語』(L. M. オルコット 作/吉田勝江 訳 角川文庫)
小学生の頃、女の子が主人公の物語が大好きでした。たくさん読んだのは外国のお話。女の子が冒険をしたり、困難を乗り越えたり、恋をしたりして成長する姿をわくわくしながら楽しみました。
その中で1冊を取り上げるとしたら『若草物語』です。アメリカの小説家オルコットの作品で、マーチ家のメグ、ジョー、ベス、エイミーの四姉妹を描いたお話です。アメリカの南北戦争が物語の背景にあるので、この時代のアメリカがどのような社会だったのか、日本とどんなところが違うのか、といったことを考えるきっかけにもなるかもしれません。ですが、やはり、物語の面白さはこの四姉妹にあります。きょうだいであっても、一人ひとり性格が違うこと、お姉さん、妹といったきょうだいの関係性によって作られる役割、きょうだいげんかがあることなど、きょうだいならではの難しさがあります。しかし、一方で、きょうだい同士が思い合う姿、助け合うあたたかさも、そこにはあるのです。
ここでは四姉妹の性格については内緒にしておきます。ぜひ、みなさん自身で、この姉妹たちの性格を味わってみてください。そして、自分は誰の性格に似ているかな、とか、誰と仲良くなりたいかな、といったことも考えてみると面白いかもしれません。
今思うと、私がかつて、女の子が主人公の作品をたくさん読んだのは、その主人公に憧れたり、好きになったりして、自分もそんな女の子になりたいという気持ちを持つためだったのかもしれません。物語の中で出会ってきた、たくさんの女の子たちが、もしかしたら今の私を作ってくれているのかもしれませんね。
おすすめの本や映像作品
梅崎高行
『ダーウィンの「種の起源」はじめての進化論』(サビーナ・ラデヴァ 作/福岡伸一 訳 岩波書店)
私がご紹介したいのは、優しいイラストがとても印象的な『ダーウィンの「種の起源」』です。個人的な話となり恐縮ですが、私はダーウィンの仕事に漠とした憧れを抱いています。
1800年代、安全も今ほど保障されていなかったでしょう。その時代に彼は、長い航海に出ました。そして、そこに暮らすへんてこな(!)生き物をじっと観察し、考えて、「人は神によって創られた」という堅固な常識をひっくり返したのです。これを著したのが、かの有名な「種の起源」。でも、なかなか手に取って読むのは大変なんですよね(苦笑)。そんな折に出会ったのが、新しく出版されたこちらの絵本でした。福岡伸一さんの訳も安心できます。読み聞かせにもピッタリで、仕事でお世話になっている保育所へお邪魔するときには、この絵本をお礼に持参するようにしています。
コロナで何かと制限され、大変な状況です。こんなときこそ皆さんと一緒に、適応し、変化していきたい(by ダーウィン)と考えております。
おすすめの本や映像作品
酒井厚
調査にご協力頂いているみなさま
日頃は、私どもの調査にご協力いただきありがとうございます。2月から始めた2019年度のアンケート調査も、多くの方にご返送いただき、心より感謝申し上げます。
新型コロナウィルスの流行により生活が一変し、色々とご苦労されていらっしゃることと思います。医療関係者の方々が大変な思いでウィルスと戦うなか、分野は違いますが子どもや家族について考える専門職として、何かできることはないか考えておりました。
本当に些細なことではありますが、外に出れずストレスがたまる日々、読書が少しの安らぎになるのではないかと考え、こんなとき読んでもらいたい本をご紹介させて頂きたく思います。
『フレデリック:ちょっとふしぎな のねずみのはなし』(レオ=レオニ 著/谷川俊太郎 訳 好学社)
レオ=レオニと言えば「スイミー」が有名ですが、同じくらい人気の作品に「フレデリック」があります。のねずみのフレデリックは、他ののねずみが冬ごもりのために食料やわらをせっせと集めているのに、日向ぼっこしたり、外を眺めたり、違うことをしています。みんなが聞いても、「お日様の光を集めている」とか「言葉を集めている」とか言うばかり。みんなは少しイライラしています。いよいよ冬になり、石垣のなかでも支度した食料やわらで最初は快適に過ごしていましたが、次第に寒さと暗さが身に染みるようになり、みんながフレデリックの言っていたことを思い出して問いかけます。さて、フレデリックはどうしたかと言うと…。
じつは、みなさんに本を紹介させて頂こうと思い立ったのは、外に自由に出れないでいる今、この絵本を思い出したからでした。
これまでに読まれたことがある方も、そうでない方も、今また手に取っていただけますと幸いです。
クリスマスカード紹介
管理者
毎年PEERSの調査にご協力頂いている皆さんにお送りしているPEERSクリスマスカード、2020年版をご紹介します。
PEERSのキャラクター造形は、「編みメーション」作家であるやたみほさんによるものです。
やたみほ:
アニメーション作家、白百合女子大学児童文化学科常勤講師。1999年より編み物でアニメーションや絵本を制作する「編みメーター」として活躍中。代表作に、NHKプチプチアニメ「けいとのようせい ニットとウール」シリーズ、「アメチャウ国の王さま」シリーズなど。
ホームページ:YATAMIMATION
YouTubeチャンネル:Yatamimation
©︎PEERS(デザイン/村松俊夫 造形/やたみほ)
©︎PEERS(デザイン/村松俊夫 造形/やたみほ)
PEERSつれづれ
眞榮城和美
新型コロナウイルス感染拡大防止策のために外出自粛生活が長期化する中,登園や登校ができない子ども達とご家庭でどのように過ごすか,みなさんいろいろと工夫されているかと思います。
今回は,一人の親として,小6と小3の娘二人が外出自粛時に取り組んで楽しかった活動の一つをご紹介します。
みなさんは「妖怪アマビエ様」をご存じですか? (我が家の小3女児は,「アマエビ」と言い間違いをしておりましたが…。)
「妖怪アマビエ様」は,人魚のような姿をした妖怪です。その妖怪は「疫病が流行したら、私の姿絵を人々に見せよ」と予言したことで,SNS上でも非常に注目されています。なんと,厚生労働省の「新型コロナウイルス感染阻止啓発活動の公式アイコンにもなっています。
妖怪アマビエ様が現れたのは,江戸時代末期の弘化三1846年4月中旬、肥後国(現:熊本県)の海岸だったそうです。その海岸では,毎晩、海の中から何か光り輝くものが出没したため,役人たちが調べたところ、妖怪アマビエ様が姿を現し,自身の名前を名乗り,予言をして海に戻っていったとのことでした。
この妖怪伝説については,最近の新聞紙面でも繰り返し取り上げられていましたので,子ども達と一緒に妖怪アマビエ様の絵が掲載されていた江戸時代の瓦版(京都大学付属図書館所蔵)の記事を眺め,「疫病退散!」「コロナ退散!」と言いながら,「妖怪アマビエ様を描いてみよう大会」を開催してみることにしました。
お姉ちゃんは,普段から絵を描くことが好きなため,まず,自分のイメージで妖怪アマビエ様を描き,その後,今,はまっている漫画の大好きなキャラクターを妖怪アマビエ様化させて描き続けていました。
その様子を見て,妹は姉の下書きした絵を指差し,「私は色塗るのが好きだから,これ,絵の具で塗っていい?」と言い,姉の許可を得た後に絵の具で色塗りを始めました。
私はと言えば,子ども達のように絵を描くことには没頭しきれなかったので,「アマビエ」をキーワードに,いろいろな情報を集めてみました。そして,絵を描くことやモノづくりが好きな方たちは#アマビエ・チャレンジ(Twitter)にご自身の作品を多数投稿されていることを知りました。また,「アマビエ塗り絵」というサイトも見つかり,我が家の小3女児の活動と似たようなことをすでに多くの方たちが楽しんでいたのだと気づきました。
今回の取り組みを通して,一人ひとりが,自分の好きな方法で好きなことに没頭することの大切さを改めて実感しているところです。
みなさんも是非,好きな方法,得意なやり方で,外出自粛生活の工夫の幅を広げてみてください。
#アマビエ・チャレンジも一つの方法かもしれません。妖怪アマビエ様の予言パワーを信じつつ…。
「妖怪アマビエ様と新型コロナウイルス退治隊」作:小6 女児 リスペクト鬼滅の刃
「姉の絵にセリフをつけたり色をつけたりすることを楽しんだ妹の作品」作:小3 女児
PEERSつれづれ
梅崎高行
私の住んでいる町はついに,5月末まで小中学校の休校を延長することに決めました。さすがに子どもたちもすることがなくなったようです。手当たり次第,懸賞やらなんやらに応募して,昨日は新聞の意見欄に投書した娘の記事が掲載されました。以下にご紹介させてください。
休校になってから,ラジオ体操を始めた。小学2年生の弟も一緒だ。(略)小学5年生のときまで,運動会でラジオ体操をしていたので,「第1」は完璧だ。弟はといえば,私をチラチラ見ながらだけど,なんとかクリアした。ところが,である。ラジオから「第2」の音楽が流れだすと同時に,2人とも動きがピタッと止まってしまった。(略)覚えていないので,ラジオから聞こえてくる声に合わせて体を動かすけれど,どうも違う。最終的には,弟はオリジナルの体操を完成させてしまった。その動きがおかしく,家族で大笑いした。
(読売新聞 気流 2020年4月28日)
皆さんのご家族は「第2」まで踊れますか?最近ではちょっとしたストレッチや筋力トレーニングの方法なども,3密を避けて自宅で実施できるよう,動画サイトで豊富に紹介されています。ラジオ体操も,健康に様々な効果が認められるようですよ(正しく踊ればですが)。上手に活用して,この時期を健康に乗り越えていきたいと思います。♪新しい朝が来ることを願って。
クリスマスカード紹介
管理者
毎年PEERSの調査にご協力頂いている皆さんにお送りしているPEERSクリスマスカード、2019年版をご紹介します。
PEERSのキャラクター造形は、「編みメーション」作家であるやたみほさんによるものです。
やたみほ:
アニメーション作家、白百合女子大学児童文化学科常勤講師。1999年より編み物でアニメーションや絵本を制作する「編みメーター」として活躍中。代表作に、NHKプチプチアニメ「けいとのようせい ニットとウール」シリーズ、「アメチャウ国の王さま」シリーズなど。
ホームページ:YATAMIMATION
YouTubeチャンネル:Yatamimation
©︎PEERS(デザイン/村松俊夫 造形/やたみほ)
©︎PEERS(デザイン/村松俊夫 造形/やたみほ)
PEERSつれづれ
梅崎高行
私は大学で、保育士を目指す学生を教えています。担当する科目に「保育内容の研究(人間関係)」という授業があり、いつも最初の授業で次のようなことを尋ねています。
「“私”と“あなた”のあいだに線を引いてください」
多くの学生が両方に矢印がある線で引きます。自分とだれかが、お互いに関わり合うことを示すのは簡単なようです。
そこで、次にもう1つ質問してみます。
「“私”と“あなた”と“あなた”のあいだに線をひいてください」
大抵の学生は、少しためらいながら、それぞれのペアのあいだに一本ずつ、双方向の矢印を引きます。そこで次のように話します。
「“私”を“親”に、“あなた”を“姉”に、もう一人の“あなた”を“弟”に、置き換えてみてください」
すると、自分が引いていない線に気づく学生が出始めて、“私”から“あなた”と“あなた”を結ぶ線のあいだや、“あなた”から“私”と“あなた”を引く線の間に矢印を引いたりします。
人同士がどのように関わっているのかばかりでなく、自分がその関係性にどう関わるかという視点は、たくさんの子どもたちと関わる保育士にとってはとても重要な資質です。学生には、この質問を通じて自ら気づいて欲しいと考えています。
私自身は、姉と弟から成るきょうだいの父親でもあります。二人の子ども同士の関係には翻弄されることばかりですが、母親とともに、2人の関係にどう関わるかを日々考え過ごしています。そんななか、ご協力いただく皆さんの調査から、
「ああ、皆さん同じなんだなぁ」(笑)
と、勇気づけられることが多くあります。
子育ての“同志”である皆さんの声をまとめることで、多くの方に少しでも役立つ知見をお伝えしていきたいと思います。