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おすすめの本 第11回:細川美幸

おすすめの本や映像作品

『Swimmy』(by Leo Lionni ‎ Dragonfly Books)

言わずと知れた名作、レオ=レオニ(Leo Lionni)作の「スイミー」です。谷川俊太郎さんの訳も素敵ですが、ここではあえて、英語版をお勧めします。 

私の息子も2年生のときに、国語の教科書で「スイミー」を読み、毎日音読をしていました。私も小さいころ同じように学びました。 

皆さんは、スイミーのだいご味としてどんなところを思い描きますか? 小さい魚たちが協力して大きな魚を追い出す、そういう物語だと、私はずっと思っていました。

ある時、当時勤めていた短大で、学生たちがスイミーを題材に影絵をすることになりました。そのときに、学科長だった恩師が、『原本を読んでごらん』と一言アドバイスをくださいました。

そして、初めて知ったことがあります。英語の本では、ある場面で、ある2つの単語だけが大文字で表記されているのです。「これだったのか、大事なことは…」と、衝撃を受けました。そして感動しました。当時、私が学生に伝え続けていた大事なワードだったからです。 

きっと、今の不安な情勢の中でも、この二つの単語は大事な力となると思います。ぜひ、機会があれば、この2つの単語と出会ってみてくださいね。

おすすめの本 第10回:細川美幸

おすすめの本や映像作品

『木をうえるスサノオ』(岡崎ひでたか 作/篠崎三朗 絵 新日本出版社)

この本の、言葉がとても面白くて、男子はもとより、意外と女子も笑ってしまう、独特の表現があります。

セリフもそうですし、人物の表現、それから…「毛」! なんと、主人公があちこちの毛を抜くのですが、不思議ですね、「毛」というだけで、子どもたちはニヤニヤします。さらに、どこの毛か!?というところと、そんなふうに飛ばす?!という表現で、また面白くてゲラゲラ大笑い。

決してコメディというわけではなく、神さまのお話なので、尊いお話で、読んだ後にほっこりしたり、ありがたい気持ちになったり、学びを感じたりもします。でも、教育本!という感じもなく、「これ、面白いよ」と、つい、姪っ子や甥っ子に勧めてしまう素敵な隠し味があります。

そして、これを読み聞かせするとき、まるで(小学生の息子の)音読の宿題のように、大きな声で思いっきり読むと、とっても気持ちがよいのです。 

親子関係が煮詰まったら、この本を大きな声で読んで、親子で一緒に笑ってるうちに、ほっこり仲良し関係に元通り…

そんな恩恵もあるかもしれない「ゆかいな神さま」のお話です。

おすすめの本 第9回:細川美幸

おすすめの本や映像作品

『どしゃぶり』(はたこうしろう 作/おーなみ由子 絵 講談社)

皆さんは、雨の音をどんなふうに表現しますか?

「ザーザー」「ぽつぽつ」「パラパラ」。いくつか思いつきますよね。

が、まだまだまだ!!

この本では、たっくさんの雨の音が表現されています。私は読みながら、「そうだそうだ、そんな音する!」とワクワクしました。ぜひぜひ、自宅でお子さんと過ごす時間に、音を表現する「オノマトペ」遊びを、やってみてください♪ 

きっと、子どもたちのほうが『先生』になること間違いなし!子どもたちのやわらかい心と表現力に、『うちの子、すごい♪』と感嘆すると思います。叱ってばかりのわが子も、きっとその時ばかりは「すごーい!」とキラキラ光って見えることと思います。雨の音、料理の音、鳥の鳴き声、ドアの開く音、生活の中のたくさんの音を、一緒に表現遊び、楽しんでみてください。

それから…私は、「あ~、こうやって、雨を全身で感じて遊びたかったなー、小さいころ」と思い出しました。さらに、「あ~、今の私は、子どもがこの感覚を味わうことを止めてしまっているかも…」と、「こらー!」「濡れるー!」「風邪ひくー!」と鬼婆のような自分の姿を反省しました。

それが普通かもしれないですけどね。でも、いつか、夕立がきたら…子どもと一緒に、雨を全身で感じてみようかな。お風呂の準備をしてから!

おすすめの本 第8回:細川美幸

おすすめの本や映像作品

『オニのサラリーマン』(富安陽子 作 /大島妙子 絵 福音館書店)

随所に突っ込みどころがある本です。まるで人間と同じような会話、同じような暮らし、だけど…

ペットがこの動物?!子どもの宿題がそれ?!血の池地獄の亡者はそんなことしているの!?満員バスの中で鬼の苦労はそこ?!ストレスたまったときに弱るのはそこか!?飲み屋で頼む酒はそれ?!(笑)

などなど、おかしくて、おかしくて、ぷぷぷっと笑えます。関西弁が主なので、九州人の私も関西弁をそれっぽく言いながら楽しみつつも、ぜひ、本場関西人の読み聞かせを聞きたいなあーと熱望しているところです。

展開が面白くて、ついページをめくってしまいますが、あらためて一つのページをジ~っと見入ると、これまた面白い場面が随所に描かれていて、『にくいな~!やるな~!』と、散りばめられた小ネタ(?)に感嘆してしまいます。

ぜひ、お子様といっしょに、楽しんでみてくださいね。

おすすめの本 第7回:眞榮城和美

おすすめの本や映像作品

『えほん もやしもん「きんのオリゼー」てをあらおう/いただきます/はをみがこう』(いしかわ まさゆき 作 講談社)

新型コロナウイルス感染症拡大により,外出自粛が続いている昨今,私たち大人が想像している以上に子ども達は菌(ウイルスも含む)に対する恐怖心を高めているかもしれません。

感染症専門家の方たちは,菌(ウイルスも含む)について「正しく怖がる」ことの重要性を説いています。

幼い子ども達も,生きていく上で大切な菌について,ご家族と一緒に楽しく学ぶことによって,「正しく怖がる」ことができるようになるのではないでしょうか。

そこでご紹介したいのがこの3冊です。

この絵本は,「もやしもん」(石川雅之著イブニングKC,第12回手塚治虫文化賞マンガ大賞など数多くの賞を受賞している素敵な漫画です。アニメ化もされています。)の中で大活躍している菌のオリゼー(麹菌)が,「てをあらう」ことがなぜ大切なのか,「いただきます」と言って毎日食べている食べ物の中でどんな菌が活躍しているのか,そして,ごちそうさまの後に「はをみがく」ことがどうして必要なのかについてわかり易く教えてくれます。

読み聞かせをする大人側にも気づきがたくさんある絵本です。例えば,「てをあらおう」の冒頭には,「お家の方へ」というメッセージがあり,その中で「読み聞かせの時に『たとえキレイに見えても目に見えないものがいるかもしれない』事を伝えていただければ幸いです。」と書かれています。また,各ページには,「お家の方へ」と欄外記載があり,何を大切にしながら子ども達と一緒に読むと良いのかがわかります。さらに,知っていると子どもに自慢できそうなうんちくもたくさん記載されています。

とにかくかわいいオリゼーと一緒に,「菌」について正しい知識を身に付け,家族そろって心身ともに健康に過ごしていきたいものですね。

保護者の方,小学生以上の方には,この絵本たちの基になっている,石川雅之著「もやしもん」(イブニングKC)もお勧めです。「菌」の存在を肉眼で視認できるという不思議な能力をもつ農業大学生が主人公の学園物語です。

おすすめの本 第6回:酒井彩子

おすすめの本や映像作品

『すいかのたね-ばばばあちゃんのおはなし』(さとうわきこ 作 福音館書店)

外出や通勤の自粛が広がり、ご家族でお家で過ごす時間が増えている昨今、私がご紹介したい一冊は、ばばばあちゃんシリーズの「すいかのたね」です。

ばばばあちゃんが裏庭で何かしています。様子を見ていたねこがほり出してみると、出てきたのは小さなスイカのたね。

「な~んだ、スイカのたねか」。つぎつぎに動物たちがやってきて、ほり出すたびに言うのは「な~んだ、スイカのたねか」。

ついに怒った、たね君!発した一言がもとで、ばばばあちゃんと大げんか!

たね君はどうしたかというと…?びっくり仰天!全員爆笑!免疫力向上につながること間違いなし!

スイカを食べるとき、かわいいけどちょっと邪魔!と感じていた、たねに対する認識も、読み終わる頃にはきっと変わっているはず!

初めてこの絵本を手にされる方はもちろん、既にお読みになっていらした方も是非もう一度本棚から取り出して、ご家族皆さまでお楽しみ頂けたらうれしいです。

夏になったら、ワイワイ笑いながらスイカが食べられることを祈りつつ…

おすすめの本 第5回:室橋弘人

おすすめの本や映像作品

『チョコレート戦争』(大石真 作/北田卓史 絵 理論社)

自分から紹介したいのは、大石真さんの『チョコレート戦争』です。

チョコレートのお城が飾られた洋菓子店のショーウィンドウが突然割れてしまうという場面に居合わせてしまった二人の少年は、店主や社長に有無を言わさず犯人と決めつけられてしまいます。

大人たちの横暴で一方的な態度に悔しさを噛みしめる彼らは、抗議のためにチョコレートのお城を盗み出す計画を立てるのですが……というところからお話は二転三転。とにかくテンポよく転がるストーリーと、思わぬ方向から事態の解決に向かう意外性、通されるべき筋が通される爽快感など、物語を読む楽しさがたくさん詰まっている一作で、自分が「本を読むことは面白いんだ!」と感じるようになった原点の一つです。

自分が小さかった頃のことを振り返ってみると、「子どもが大人をやり込める話」というのは、それだけで魅力的ですごくワクワクしたように思います。それはきっと、家族から同年代の友人へと社会関係を広げて成長していく真っ只中にいた少年の背中を、気持ちよく押し出してくれたからではないでしょうか。

ある程度の漢字も読めるようになったくらいのお子様を読書の道に誘う一作としてお勧めします。

おすすめの本 第4回:則定百合子

おすすめの本や映像作品

『赤毛のアン』(L. M. モンゴメリ 作/村岡花子 訳 新潮文庫)

私からは、女の子が主人公の物語でもう一冊、言わずと知れた名著「赤毛のアン」を紹介したいと思います。

この物語は、孤児院で育った主人公のアンが、マリラとその兄マシューに引き取られるところから始まります。マリラとマシューの深い愛情のもと、自然豊かな土地でのびのびと生きる子ども時代のきらめきが詰まったアンの姿は、私たちの想像をかきたて、世界は彩に溢れている、ということを教えてくれます。

そして、生まれて初めて、本を読んで涙がこぼれるという経験をしたことを、私は今でも忘れられません。どうして涙がこぼれたのか…は、この本を読んでみてくださいね。いつか物語の舞台となったプリンスエドワード島に行ってみたい。

大人になった今でも、そんな夢を描かせてくれる素敵な一冊です。

引用

赤毛のアン 赤毛のアン・シリーズ ルーシー・モード・モンゴメリ (著)村岡花子(訳),新潮社; 新装版

おすすめの本 第3回:前川浩子

おすすめの本や映像作品

『若草物語』(L. M. オルコット 作/吉田勝江 訳 角川文庫)

小学生の頃、女の子が主人公の物語が大好きでした。たくさん読んだのは外国のお話。女の子が冒険をしたり、困難を乗り越えたり、恋をしたりして成長する姿をわくわくしながら楽しみました。

その中で1冊を取り上げるとしたら『若草物語』です。アメリカの小説家オルコットの作品で、マーチ家のメグ、ジョー、ベス、エイミーの四姉妹を描いたお話です。アメリカの南北戦争が物語の背景にあるので、この時代のアメリカがどのような社会だったのか、日本とどんなところが違うのか、といったことを考えるきっかけにもなるかもしれません。ですが、やはり、物語の面白さはこの四姉妹にあります。きょうだいであっても、一人ひとり性格が違うこと、お姉さん、妹といったきょうだいの関係性によって作られる役割、きょうだいげんかがあることなど、きょうだいならではの難しさがあります。しかし、一方で、きょうだい同士が思い合う姿、助け合うあたたかさも、そこにはあるのです。

ここでは四姉妹の性格については内緒にしておきます。ぜひ、みなさん自身で、この姉妹たちの性格を味わってみてください。そして、自分は誰の性格に似ているかな、とか、誰と仲良くなりたいかな、といったことも考えてみると面白いかもしれません。

今思うと、私がかつて、女の子が主人公の作品をたくさん読んだのは、その主人公に憧れたり、好きになったりして、自分もそんな女の子になりたいという気持ちを持つためだったのかもしれません。物語の中で出会ってきた、たくさんの女の子たちが、もしかしたら今の私を作ってくれているのかもしれませんね。

おすすめの本 第2回:梅崎高行

おすすめの本や映像作品

『ダーウィンの「種の起源」はじめての進化論』(サビーナ・ラデヴァ 作/福岡伸一 訳 岩波書店)

私がご紹介したいのは、優しいイラストがとても印象的な『ダーウィンの「種の起源」』です。個人的な話となり恐縮ですが、私はダーウィンの仕事に漠とした憧れを抱いています。

1800年代、安全も今ほど保障されていなかったでしょう。その時代に彼は、長い航海に出ました。そして、そこに暮らすへんてこな(!)生き物をじっと観察し、考えて、「人は神によって創られた」という堅固な常識をひっくり返したのです。これを著したのが、かの有名な「種の起源」。でも、なかなか手に取って読むのは大変なんですよね(苦笑)。そんな折に出会ったのが、新しく出版されたこちらの絵本でした。福岡伸一さんの訳も安心できます。読み聞かせにもピッタリで、仕事でお世話になっている保育所へお邪魔するときには、この絵本をお礼に持参するようにしています。

コロナで何かと制限され、大変な状況です。こんなときこそ皆さんと一緒に、適応し、変化していきたい(by ダーウィン)と考えております。

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